MOA美術館所蔵 𠮷田博 木版画展 抒情の風景:概要

MOA美術館所蔵 𠮷田博 木版画展 抒情の風景

見どころ関連イベントガイドマップ/音声ガイド/解説映像開催概要

明治・大正・昭和の時代にかけて活躍した画家、𠮷田博。福岡県久留米市に生まれ、若くしてその才を見出された博は、水彩画・油彩画・木版画といった分野で優れた作品を残しました。中でも国内外の景観を中心とした木版画を多く制作し、その精緻な技法と色彩の豊かさで、今もなお愛好家を魅了し続けています。また、特に「櫻八題」、「東京拾二題」など日本の風景を表現した作品は、その場の光や大気の様子までも再現したかのような写実性と、観る人にどこか懐かしさを感じさせる抒情性を兼ね備えています。本展では𠮷田博の木版画にスポットを当て、MOA美術館所蔵の作品より名作86点を紹介します。

《瀬戸内海集 光る海》 1926(大正15)年 木版、紙 37.2×24.7cm

入館料金
  当日 前売・団体 平日午後5時以降
一   般 900円 700円 700円
高 大 生 700円 500円 500円
中学生以下 無料
チケット販売所

・チケットぴあ(Pコード:767-946)
・コンビニエンスストア共通(JTB商品番号:当日券:0244270)
 サークルK・サンクス、セブンイレブン、ファミリーマート、ミニストップ、ローソン

見どころ

伝統的な木版画に洋画の表現を融合した「新しい木版画」で国内外を魅了。時間の経過や大気の移ろいまでも捉えた、木版画とは思えない色彩の表現、写実性は必見。情緒あふれる風景をお楽しみください。

序章 𠮷田博の木版画

𠮷田博の木版画には、大判・多色摺・別摺という、3つの大きな特徴があります。長辺が70cmを超える大判作品には、優れた下絵の構図と高い摺りの技術の両方が要求されます。また、何枚もの版を使用し何回も摺り重ねる多色刷では、色味の複雑さや立体感を出すため、正確に版の構成を考えることが必要でした。多くの作品が30回前後の摺りで完成となるところ、博の作品では96回も摺っているものもあります。また同じ版木を用いながら作品によって色を変える別摺では、時間や気候の変化を巧みに表現しています。自ら彫りと摺りを研究した博は、創意工夫を重ねた「新しい木版画」を生み出しました。

(上)《冨士拾景 朝日》 1926(大正15)年 木版、紙 53.3×71.2cm

大判作品のうちの1点。富士山の雄大かつ草原荘厳な姿が、見事に表現されている。

(下)《陽明門》 1937(昭和12)年 木版、紙 37.9×24.8cm

多色刷作品のうちの1点。完成までに96回の摺りを重ねており、緻密な門の装飾が立体感をもって再現されている。

第1章 旅する画家

日本人の洋行がまだ珍しい時代、博は決死の覚悟をもって政府の後押しなく渡米し、成功を収めました。その後もボストンをはじめアメリカで活躍する一方、欧州からインド、アジアにまで出かけ、各地で写生を続けています。グランドキャニオンのようなアメリカの雄大な自然や、マッターホルンをはじめとするヨーロッパの高峰。「水の都」ヴェネツィアに、壮麗なインドの宮殿。そして晩年に従軍で訪れた中国の街並み―。数々の写生旅行で博が目にした風景は、その土地それぞれの特徴を美しく捉えながら、木版画として私たちの前に再現されています。

(上)《マタホルン山》 1925(大正14)年 木版、紙 51.0×36.0cm

高山を好んだ博は、スイスの高峰・マッターホルンにも魅了された。その形を烏帽子岳に、険しさを槍ヶ岳に例え、賛辞を送っている。

(下)《タジマハルの朝霧 第五》 1932(昭和7)年 木版、紙 36.2×51.0 cm

長男・遠志と写生旅行に訪れたインドでは、その景観とともに、宮殿をはじめとする建造物の細やかな装飾にも心を奪われた。

第2章 山の画家

若き日より山に親しみ、深山幽谷に分け入って写生をした博にとって、登山はライフワークそのもの。毎夏の日本アルプス登山を欠かさないほど高山に魅入られた博は、生涯をかけて「山の一番美しい表情」を捉えた作品を制作しました。葛飾北斎の「冨嶽三十六景」に着想を得たと言われる連作「冨士拾景」など、様々な場所から富士山の姿を捉えた作品は、1つの山に対する博のこだわりを感じさせます。また博が最も愛した日本アルプスからは、次男の名前にもなった穂高山(穂高岳)と、隆々とした流れを見せる黒部川を描いた作品を展示します。

《日本アルプス十二題の内 穂高山》 1926(大正15)年 木版、紙24.9×37.5cm

次男・穂高の名前の由来となった穂高山(穂高岳)は、博が日本アルプスの中でも特に好んだ山。また山だけではなく、裾野に広がる湖水美をも称賛した。

第3章 水の画家

広々とした海、とめどなく流れる川、静かに周りを映す湖、雨の名残の水たまり―。博の木版画作品には、様々な姿で「水」が登場します。中でも連作「瀬戸内海集」では、同じ版を用いながら色を変えて摺る手法をとり、1つのイメージを朝、午前、午後、霧、夕、夜の6つの場面に展開しています。この作品ではその場に満ちる光や大気の温湿度、時々の天候や映り込む景色が刻一刻と姿を変えていく様子が表現されています。また、ダイアナ妃が執務室に飾った《光る海》など、博の代表作といえる作品も併せてご紹介します。

(左)《瀬戸内海集 帆船 朝》 1926(大正15)年 木版、紙 50.8×35.9cm 
(右)《瀬戸内海集 帆船 午後》 1926(大正15)年 木版、紙 50.8×36.1cm

ダイアナ妃も愛した𠮷田博
国内外から愛された𠮷田博の作品は、ダイアナ妃が買い求めていたことでも知られています。執務室には《瀬戸内海集 光る海》と奈良の名所を描いた《猿澤池》が飾られていました。他にも連合国軍最高司令官であったダグラス・マッカーサー、精神分析学者のジークムント・フロイトらも𠮷田博の作品を入手していたといわれています。

《瀬戸内海集 光る海》 1926(大正15)年 木版、紙 37.2×24.7cm

第4章 旅する画家、再び

博が制作した250種類以上の木版画の中で、特に数が多いものは日本の名勝地を描いた作品です。日本の風景が持つ抒情性や、自然と名跡との調和の美しさは、日本に閉じこもることなく、多くの洋行を経た博だからこそ捉えることができたものです。博は、東京に取材した連作「東京拾二題」をはじめ、京都の《金閣》、奈良の《二月堂》、栃木の《東照宮》など、日本各地の名所を題材に制作を続けました。博が実際に訪れたことのある風景だからこそ、時の移ろいやその場に流れる空気、あるいは人々の賑わいが作品から伝わってきます。

(左)《金閣》 1933(昭和8)年 木版、紙 37.6×24.5cm
(右)《東京拾二題 亀井戸》 1927(昭和2)年 木版、紙 37.5×24.7cm

歌川広重の連作「名所江戸百景」のうち《亀戸天神境内》に基づくと考えられる作品。同様の構図をとりながら、博の作品では量感のある藤の房だけではなく橋を映す水面の描写にも重点が置かれている。

ボストン美術館と𠮷田博
𠮷田博が初めてボストンを訪れたのは、1899の年末でした。画家で同志の中川八郎と渡欧のための資金を得るために、自作を持って渡りました。翌年に開催した展覧会は大成功。その際にボストン美術館は水彩画の《妙義神社》を入手しました。年末には、日本の画家仲間5人と再び展覧会を開催しました。2度目は1904年。のちに妻となる義妹ふじをと共に渡り、当地で骨董商を営んでいた松木文恭の支援を受けて2年ほど滞在。ボストンを拠点にアメリカ東海岸の各地で「兄妹二人展」を開催し好評を得ます。3度目は、関東大震災で打撃を受けた画家仲間を救済するために渡米し、1924年にボストンを皮切りに展覧会を開催しました。このとき、初めて西部を廻り、グランド・キャニオン、レニア山などアメリカの雄大な山岳風景を目の当たりにし、スケッチを重ね、作品にしています。

第5章 抒情の風景

積極的に国内外をめぐり続けた𠮷田博。その隣には、画家としての活動に理解を示し、共に旅をし、支え続けた家族の存在がありました。博はこうした家族との何気ない日々の生活も作品に残しています。また日本を象徴する花である桜の名所を表した連作「櫻八題」も手掛けています。8つの名所それぞれに相応しい種類の桜が取り合わされた「櫻八題」は、描かれる時間帯や天候、構図も異なっており、「桜」という共通の題材を通して様々な春の風景を再現した作品です。異国にあっては日本を想像させ、日本にあってはいつかどこかで見た懐かしさを覚えさせる桜は、博によって「抒情の風景ノスタルジック・ユートピア」として表現されています。

《櫻八題 弘前城》 1935(昭和10)年 37.5×24.7cm

※作品はすべて、MOA美術館所蔵

MOA美術館
熱海駅から車で5分ほどの丘の上に建つMOA美術館は、熱心な東洋美術の蒐集家であった創立者・岡田茂吉の意志を継承し、1982年に開館しました。尾形光琳《紅白梅図屏風》をはじめとした国宝3件、重要文化財65件、重要美術品46件を含む約3500件を所蔵しています。現在、杉本博司氏の設計による大幅な改修工事が進められており、2017年2月5日にリニューアル・オープンの予定です。

関連イベント

講演会「𠮷田博の木版画と旅」 事前申込制

日時 2017年1月14日(土)14:00~15:30
講師 吉田 司 氏(版画家/𠮷田博令孫)
場所 名古屋都市センター 11階ホール
定員 150名/聴講無料/要当日入館券または半券

● 申込方法
メールフォームもしくは往復ハガキに必要事項をご記入のうえ、お申込みください。
※応募者多数の場合は抽選になります
※締切後、当落に関わらずお申込みいただいた方法で結果をお知らせいたします


● 申込締切
2017年1月5日(木)必着

往復ハガキ (1)郵便番号・住所 (2)氏名 (3)電話番号 (4)年齢 (5)参加人数(2名まで)
〒460-0023 名古屋市中区金山町1-1-1
名古屋ボストン美術館「𠮷田博 講演会」係
メールフォーム ● 一般の方はこちら
講演会「𠮷田博の木版画と旅」
● 名古屋ボストン美術館 メンバーシップ会員様はこちら
当館メンバーシップ会員様は、事前にお申込みいただくことでお席を確保いたします。メールフォームにてご予約いただくか、お電話(052-684-0791)またはご来館時に受付にてお申し込みください。
講演会「𠮷田博の木版画と旅」
当館学芸員によるミニ・レクチャー

当館学芸員が展覧会の見どころをお話しします。

日時 2017年1月28日(土)、2月11日(土)
各日14:00~14:30
場所 5階レクチャールーム
定員 40名/聴講無料/要当日入館券/当日先着順 
※13:00より3階受付にて整理券をお配りします
Go!Go!カップルで美術館

期間中は高校生以上で当日入館券をご購入のカップルを対象に入館料金を200円割引。

開催期間 2017年2月7日(火)~14日(火)

ガイドマップ/音声ガイド/解説映像 ※図録の販売はありません

オリジナル展覧会ガイドマップ「𠮷田博と巡る 全国名所の旅」

博の旅路を追いかけよう!――全国名所の旅へようこそ!

実際に目で見て、肌で感じた風景を作品にすることをポリシーとしていた博。一体どんな場所に行ってどんな名所を見つめていたのでしょうか。本展では、展示作品に描かれた場所を地図とともにご案内するガイドマップを、ご来館者全員にお配りしています。ガイド片手に、展示室で画家の旅路を追いかけてみませんか?

※描かれている場所が不明の作品に関しては、掲載しておりません

音声ガイド

美術館で旅気分! ――博が旅した名所を徹底ガイド!

𠮷田博は国内外の津々浦々を旅行し、また訪れた名所を次々と木版画で再現しました。作品になった場所はどれも現在の観光地としても名高い場所ばかり。美術館での旅のお供として、それら各名所にまつわるエピソードをご紹介します。

貸出価格520円(税込)(所要時間:約20分)

解説映像

𠮷田博ってどんな人? ――素顔と魅力に迫ります!

「近代風景画の巨匠」から、「絵の鬼」、「山の画家」、「水の画家」、果ては「黒田清輝を殴った男」とまで呼ばれる𠮷田博。いったいどんな人で、どんな人生を送ったのか…。作品とともに、画家𠮷田博の人物像を紐解きます。

場所:5階 レクチャールーム

開催概要 ※5階ギャラリーのみの展示です

会期 2017年1月14日(土)~2月26日(日)
開館時間 平日10:00~19:00、土日祝日10:00~17:00
※入館は閉館時間の30分前まで
休館日 月曜日(祝日・振替休日の場合はその翌日)
アクセスはこちら団体でのご利用はこちら

主催 名古屋ボストン美術館
共催 中日新聞社
後援 愛知県、名古屋市、愛知県教育委員会、名古屋市教育委員会、名古屋商工会議所
協賛 中京テレビ放送
特別協力 MOA美術館
協力 ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋、エスカ、中部国際空港、ユニモール

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