ボストン美術館 ヨーロッパ美術部の「ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち」担当キュレーターのケイティ・ハンソンさんが来日!

展覧会の見どころやパリジェンヌの魅力について伺いました。

 

展覧会の見どころについて教えてください

ご覧になる皆さんそれぞれにとって、必ず何か発見がある展覧会だと思います。例えばファッションや時代背景など、会場を巡る時に自分なりのテーマを持って見ると、そのテーマごとに新しい発見があって面白いと思います。

 

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作品の調査をする修復士とケイティさん(ボストン美術館2017年2月8日)

Photograph © Museum of Fine Arts, Boston

エドゥアール・マネの大作《街の歌い手》が修復後初公開になります。マネに関する執筆も多数あり思い入れのある作品だと思いますが、本作の魅力を教えてください

私の大のお気に入りの作品です。この作品は大都市に住むという感覚を伝えてくれます。現代に生きる私たちと違って、マネをはじめ19世紀の人々にとって大都市に住むことは新しいことでした。大都市ではこういうことが起こります。ふと素敵な人や面白そうな人とすれ違って、その人に目が釘付けになる。けれどもおそらくその人にはもう二度と会えない。そして、その人が持つ物語について知ることはない。この作品はまさにそんな瞬間を捉えています。本作が一度見たら忘れられないのは、この瞬間を捉えているからだと思います。マネがこの瞬間に街の歌い手に対して何を感じていたのか…時を超えて感じさせてくれます。

 

展覧会初日の講演会ではパリジェンヌについて「enigma(難解な)」とも表現されていました。世界中の多くの人々を惹きつける一方で、“パリジェンヌ”の定義はとても難しいと感じます。ケイティさん個人的には、パリジェンヌのどのようなところに惹かれますか?

2006~2011年の間、パリの夏期講習で教えていたので、現代のパリジェンヌについて観察したり考えたりする機会が多くありました。そこで私が興味深いと感じたのは、彼女たちの上品で、落ち着いて、自信に満ちているそれぞれの姿が、常に自然体であることです。素敵だけど、リラックスしていて努力の跡は見えない。なので、パリジェンヌのようになるのは簡単そうに見えるけれど、実際にどうやるのかは分からないわけです。

ここで、フランス語の表現“je ne sais quoi ((特に好感の持てる)言葉では言い表せないもの)”が浮かびます。フランスにおいて、惹かれるけれどそれが何かは言葉にできないという繊細な感覚を表現する言葉があることを考えると、本展覧会で「パリジェンヌの魅力はこれだ!」と定義してしまわなかったことは間違っていなかったと思えます。

 

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ケイティ・ハンソンさん(ボストン美術館 ヨーロッパ美術部 キュレーター)

探険家スタイルのナボンと一緒にパチリ!

展覧会を担当されて、新しく発見したことはありますか

展覧会の準備をしていた2年半で、とても多くのことを学びました。《街の歌い手》の修復により分かったことももちろん、例えば18世紀のファッションが当時どのように人々に知れ渡っていたかなんて初めて知りました。刊行物に掲載されている情報もゴシップなど含め、現代のファッション誌と変わらないことに驚きました。時間や地理、文化を超えて様々な感覚を共有できることが作品を鑑賞する魅力ですね。

 

最後に、展覧会をご覧になる皆様にメッセージをお願いします

ぜひ、心をオープンにして来てください。会場では、あなたを驚かせるかもしれない、あなたが予期せず恋に落ちるような発見があるはずです。時間に追われていては見逃してしまうようなわずかなところに、長く忘れられない発見があるかもしれません。どうぞゆっくりと展覧会でパリジェンヌの姿を追っていただけると嬉しいです。

 

ケイティさん、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

美術館は「ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち」の開幕に向けて準備も大詰めです。展覧会では、ボストン美術館のコレクションから18世から20世紀の多彩な作品約120点でパリジェンヌの魅力に迫ります。パリジェンヌといえば、おしゃれなファッションを思い浮かべる人も多いことでしょう。展示室でも、もちろんドレスや靴など彼女たちが愛したファッションにも注目します。そこで、今回もやります!なりきりコーナー!展覧会で扱う時代を代表して、「クリノリン・スタイル」「バッスル・スタイル」「アール・デコ・スタイル」の3つのスタイルのオリジナル衣装をご用意します。衣装デザイン・制作にご協力いただいたのは、名古屋デザイナー学院、名古屋ファッション専門学校、名古屋ファッション・ビューティー専門学校の皆さんです。鋭意制作中の現場をレポートします!
 

 

1850~60年代に流行した鳥かご状に円形に大きく広がるスカートが特徴的な「クリノリン・スタイル」のドレスを制作してくださるのは名古屋デザイナー学院 ファッションデザイン学科2年生の今田百香さん。
「貴族の豪華なスタイルのデザインはよく目にしますので、庶民が身に着けるクリノリン・スタイルのデザインを研究し、素朴で清楚なイメージを提案したく選びました」と、意気込みを語ってくれました。

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新しいイメージのクリノリン・スタイルに期待が膨らみます

 

「バッスル・スタイル」のドレスを制作してくださるのは名古屋ファッション専門学校 ファッションマスター科テクニカルコース2年生の玉腰佑海さんと名古屋ファッション・ビューティー専門学校 ファッションマスター科1年生の鈴木紗綾さんです。

バッスルは腰の後ろの膨らみを形作るのが難しいスタイル。日本が洋装を採り入れた1870年代の流行で、日本では「鹿鳴館スタイル」とも呼ばれています。どちらも優しい色合いの上品なドレスです。 

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「古い時代の衣装を制作するのは初めてだけど、バッスル・スタイルが好きなので挑戦しようと思いました」と玉腰さん
 

 

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様々な生地を組み合わせて試行錯誤
 

  

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「腰の後ろの膨らみに身頃を合わせることに特に気を遣いました」と鈴木さん

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襟と袖はドレスに合う色に染めたそうです!

 

1920年代に流行したローウエストで直線的なラインが特徴の「アール・デコ・スタイル」のドレスを制作してくださるのは名古屋ファッション専門学校 ファッションマスター科3年生の伊藤るみさん。

同スタイルが多く登場する映画『華麗なるギャツビー』などを参考に、時代の雰囲気を想像しながらデザインしてくれました。胸元にあしらわれたシガレットケースの図案に繊細に輝くスワロフスキー、揺れるプリーツが気分を盛り上げてくれます。
 

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スワロフスキーが1点1点丁寧に付けられています

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アール・デコ・スタイルに欠かせないプリーツ!

素材にこだわり丁寧に制作してくださっている姿を拝見し、私たちスタッフも衣装の出来上がりがとても楽しみです!

「ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち」は6月10日(土)に開幕します。
衣装は会期中自由に試着していただけます。ドレスをまとって、気分はパリジェンヌ♪ぜひ記念撮影をお楽しみください!

1月14日(土)に開幕する「MOA美術館所蔵 𠮷田博 木版画展 抒情の風景(ノスタルジック・ユートピア)」では、明治・大正・昭和の時代にかけて活躍した画家、𠮷田博の木版画を通して国内外の風景をご紹介します。

福岡県久留米市に生まれ、若くしてその才を見出された𠮷田博は、水彩画・油彩画・木版画といった分野で優れた作品を残しました。中でも国内外の景観を中心とした木版画を多く制作し、その精緻な技法と色彩の豊かさで、今もなお愛好家を魅了し続けています。特に「櫻八題」、「東京拾二題」など日本の風景を表現した作品は、その場の光や大気の様子までも再現したかのような写実性と、観る人にどこか懐かしさを感じさせる抒情性を兼ね備えています。次回展では、𠮷田博の木版画にスポットを当て、MOA美術館所蔵の作品より名作86点をご紹介します。

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𠮷田博《瀬戸内海集 光る海》1926(大正15)年

MOA美術館所蔵

 

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名古屋ボストン美術館 館長

馬場駿吉

𠮷田博(1876-1950)は日本洋画界の曙を告げる画家の一人として、最近とみに再評価されて来ました。彼は弱冠23歳で米国に渡り、その翌年にはボストン美術館で作品を発表する機会に恵まれます。そんな経歴を思い浮べますと、遥かな時空を超えての、当館との浅からぬ縁をあらためて感じさせられます。
𠮷田の画業は水彩画、油彩画、木版画と幅広く、多彩な作品を残しましたが、とくに木版画には強い関心を示しました。彼は国内はもとより、欧米、東洋各地に足を運び、その景観、風物への敬意を精緻な刻線と色彩により表現し、今も私たちをその作品が醸し出す香気ともの懐かしい情感に浸らせてくれます。今回展示の86点はMOA美術館所蔵の名品です。同館のご厚意に深謝いたします。

 

 

9月10日(土)に開幕する次回展「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」では、抜群の保存状態による色鮮やかさを誇るボストン美術館の浮世絵コレクションから、ライバル同士としてしのぎを削った兄弟弟子・歌川国芳と歌川国貞の作品170件をご紹介します。江戸の「俺たち」を熱くした、国芳が描く英雄や任侠の世界。江戸の「わたし」が憧れ夢見た、国貞が描く歌舞伎役者に美人たち。現代の少年マンガやファッション雑誌につながるような、私たちにも共感できる世界観を探りながら、かつてない身近な視点で浮世絵をご覧いただきます。本展に寄せた、馬場館長からのメッセージをご紹介します。

 

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名古屋ボストン美術館 館長 馬場駿吉

江戸ファッションになりきりコーナーで、“江戸伊達男”に変身!

幕末といえば、平穏さが永く続いた武家社会に変革の足音が響き、海外からも開国を迫る汽笛が聞こえ始めた時代を思い浮かべます。でも一方では美しいもの、力強いものへの庶民のあこがれが一層高まった時代ではなかったでしょうか。国芳、国貞の浮世絵はそのような世情の側面をよく表わしているように感じられます。どんな時代にあっても、美への関心を失うことのない日本人の心根をあらためて誇らしく思うとともに、国際情勢の変遷をも乗り越えてこれらのすばらしい作品を大切に保存しそれを広く世界に紹介し続ける米国ボストン美術館の懐の深さにも大きな敬意を捧げたいと存じます。

「俺たちの国芳 わたしの国貞」展は只今準備中ですが、今回の「なりきりコーナー」は江戸コーデ。

江戸風ファッションで国芳・国貞の作品になりきってみてはいかがでしょうか? 

 

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美人画が得意な国貞作品に登場する江戸ガールたち。その作品からインスピレーションを得た衣装を制作してくださったのは、中部ファッション専門学校の ファッション流通学科ショップスタイリストコース2年生の林東香さんとファッション学科アパレルデザインコース2年生の丸山真緒さんです。3着の着物を分 解し、再度組み合わせて新たな着物を制作しました。袖にはレースがあしらわれ、襟元が重ね着をしたように工夫されています。オーガンジーでできたバルーン スカートを合わせれば、“今様江戸女子姿”の完成です!

一方、英雄や武者絵が得意な国芳。クールガイなファッションに欠かせないのは羽織と髑髏。カッコイイ衣装を制作してくださったのは、名古屋デザイナー学院のファッション科2年生の満仲明日香さん、澁谷千晶さん、山田侑華さん、酒井美穂さんです。羽織の文字は書道家の友人が直接書いてくれたそうです。髑髏とファーが付いた作品は、デニムを染めて着物に仕立て、背中には手書きの髑髏が配されています。これらの衣装を着れば、魑魅魍魎も粋に着こなす“江戸伊達男”に変身です!

 

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展覧会は9月10日(土)から開催です。 

展覧会タイトル「俺たちの国芳 わたしの国貞」展、略して“くにくに展”は、イベントを

もりもりにして皆様のご来館をお待ちしています!

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馬場館長も、ハイ、ポーズ!